サロン日記
ひとり頑張るあなたへ
お客様の中には、乳がん治療後に家族から心配も気づかいもしてもらえず、とてもつらい思いをされる方が年に2〜3人ほどはいらっしゃいます。
妻や母親が経験した病気のことを、まるで無視するかのように心配もきづかいもしないことがあるのです。
また、化学療法の副作用による脱毛や術後合併症によるムクミなど、見た目の変化を笑ったりからかったりするモラルハラスメントを受けるケースもあります。
そして家族の中で孤立してしまう「いじめ」のような状況もあります。
家族全員ではなく夫だけからモラハラを受けているというケースもあります。
そのような場合、がんを経験されたご本人はモラハラを受けているという自覚はなく「そういう家族なんだ」と諦めてしまうようです。
こういった家庭内での孤立やハラスメントは、乳がん特有の気がします。
消化器や呼吸器など他の部位のがんでは聞いたことがありません。
それは、命にかかわる病気だという事の重大さを考えないためだと思います。
家族の気持ちは一律して 「乳がんは治る病気でしょ」 という理屈から生まれています。
・早期に発見すれば完治する。
・乳がんは治る病気である。
これはメディアが頻繁に伝えていることで、希望をもたらすものです。
けれどもやはり「がん」とは恐ろしい病気です。
病気の怖さを伝える事はとても難しいことです。
絶望させたり不安にさせたりすることに繋がるからです。
「がん」とは本当に恐ろしいもので、乳がんは命にかかわる危険な病気です。
そのことを忘れずに、決して油断せずに、 「しっかりと標準治療をやり切った人にとっては」 早期に治療すれば治るから恐れなくて良いということなのです。
早期発見で治療されても、乳がんは再発する可能性があります。
なので、治療が終わってからも乳がんはセルフチェックが必要だし、乳房(温存手術をした場合は両方の)・脇の下や首のリンパなどを日常的に触ってほしい。
完治したようにみえても、絶対に再発しないと油断せずに、体の変化に気づけるようにするべきなのです。
そういう心構えを含めて、治療が終わってから合併症や後遺症とは年単位の闘いをしていくこと。
ほかの病気と違って、がんを経験した人を「サバイバー」と呼ぶのはそんな理由もあります。
治療が終わってから、静かな第二の闘病がスタートするということは、あまり知られていません。
もちろん、順調に回復して職場や家族のサポートもあり、特に困っていない方も大勢います。
また、退院時のセルフケアの指導や外来でのサポートが充実している場合もありますが、それはまだ数少ない幸運なケースです。
化学療法や放射線治療の後遺症・傷跡の痛み・リンパ浮腫などの術後合併症というのは、本当にしつこいものです。
毎日の暮らしの中で長い時間をかけてようやく体との付き合い方に慣れていくことができます。
日にち薬という言葉がありますが、月単位どころか半年〜年単位で回復が進むと考えた方が良いくらいです。
家族から、まるで乳がんを経験した事がなかったかのように扱われている。
体への気づかいや心配、配慮をしてもらえない。
それはその人を失いたくない気持ちや、がんという病気に対する恐怖心から家族の方が病んでいるという状況だと思います。
または、それこそがその家族にとっての病気の乗り越え方であるとも言えます。
どちらにしても、決して家族単位で健康的な心のありかたとは言えない、追い詰められた状況です。
回復していくまでの過程は、家族全員を呼んでしっかり説明した方が良いといつも感じています。
そして病気を経験した本人の感じる事や体の症状について、専門家がいる場で話せる時間が必要だと思います。
家族全員が難しくても、誰か一人でもそういう時間を持つことが必要ではないかと。
テレビやネットで伝わる情報には個人差がありすぎて、誤解や不安の元になります。
けれども病院には人手が足りなくて対応することが難しい。 だから、誰か一人が「がん」を経験することは家族にとっての「がん経験」なのです。
冠婚葬祭と同じように家族みんなで悩んだりぶつかったり共感したりしながら、それぞれの道を探して、乗り越えていけたらと思っています。
寄り添うにしろ無視するにしろ、それまでの家族のありかたがより色濃くなります。
絆は深まり、悪いものはより悪くなる。
どうしようもない気持ちで新年を迎えた方へ。
あなたを傷つけている人こそ、心が病んでいて病気が怖いのだと考えてください。立ち向かうあなたが強くて立派なのです。
